北星余市応援ラジオ・テキスト4 フリートーク編1 『そう簡単に辞めさせてもらえない学校』

テキスト3 からの続き
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藤井 : それで出口さんと言えば、お母さんのコミュニティをやられているんですけども。

出口 : そうですね。

藤井 : その辺の話しをぜひ。

出口 : あ、いいですか?

藤井 : はい、時間の余裕があるので。

出口 : そうなんですよ。(Tシャツを示しながら)ステキでしょ。わたしの息子がいちばん最初に入った下宿で、その同じ下宿の子どもたちのお母さんたちと今でもずっと仲が良くって。札幌に一人、千葉に三人、神戸に一人、苫小牧のわたしを入れて全部で六人。『母さんズ』っていう勝手なネーミングを付けて活動しているんです。やっぱり子どもが在学中、私たちは必死なんですよね。

藤井 : うん。

出口 : でも、その中でOBのお父さん・お母さんたちが、私たちの子どもをを気にかけてくれたりとかして、親の知らないところで子どもたちがお世話になっていることがあって。そうした中で、私たちは在学中も活動してましたけど、子どもたちが卒業した後も、自分たちがしてもらった分を他のお子さんに返そうという感じで。

藤井 : うんうん。

出口 : いろんな子どもたちに声をかけたりして。あと、北星余市は私立の高校ですから、寄付金とかってありますよね。在学中はなかなか寄付はできませんよ、親は。それで、卒業してから『母さんズ』で、特に千葉のお母さんたちがリーダーシップをとってやってるんですけど、(Tシャツを示しながら)こういう北星余市のネーミングを入れて、「H・Y・P」が北星余市PTAの略なんですよ。

藤井 : あー、なるほど。はいはい。

出口 : (背中をカメラに向けて)で、後ろのこれ。(熊のマークのプリントを見せながら)「親出没注意」。

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國井 : ははは、すごいですねー、はいはいはい。

出口 : 「子どもがどこにいても親が見守っているよ」っていう思いを込めて、このロゴでTシャツだとかステッカーだとか、エコパックだとかエプロンだとか、そういうものを発注して作って、学校祭とか競歩のときに、これらを欲しいっていう現役のPTAのお母さんたちに買っていただいて、その収益を学校の方に寄付する活動をしています。

藤井 : はいはい。うーん。これは他の下宿のお母さんたちも同じようなことをやられているんですか?

出口 : 他の下宿のお母さんたちはどうなんでしょうね。今のところは、自分たちが勝手にやってる感じです。

藤井 : ははぁ。でも、そうやって各自勝手にやってる、やっていいというのも北星余市の特徴のひとつかなーって思いますね。

出口 : 下宿単位とかではなくて、学校祭とかになったら手作りの編み物とか、そういうものを親がバザーで売ったりした収益金を寄付することはありますね。

藤井 : はいはい。話を聞いてると、そういういろんな物をブランド化して打ち出しやすい要素が北星余市にはあるのかなって思いますね

出口 : たしか50周年のときは、そういった商品の売上金がけっこうあったので、50周年事業の寄付にできましたし、(スマホ裏を見せながら)こんな感じで「親出没注意」のステッカーを作ることもできて。

國井 : ははは。

藤井 : こないだ見せてもらいましたけど、いいですよね。

出口 : あとは去年、全然他人のお子さんなんですけど。わたしたち『母さんズ』で卒業文集に文章を寄せることになって。子どもたちは謹慎したら「謹慎の舘」に行くじゃないですか。そこで何をしてるんだろう、どんなことをしてるんだろう、「牛くさい」ってどういうことなんだろうと思って。

藤井 : 謹慎中に行くことになる場所ですよね。

出口 : そう。牛くさいのは臭いのかもしれないけど、実際にどんなことをするのか私たちが体験してきちゃおうかっていう軽いノリで。赤井川の方に「あったべや」さんという民宿があって、そちらの牛のお世話をするところなんですけど、体験に行ったんですよね。

藤井 : うん。

出口 : で、実際そこに一人謹慎をしていた子が偶然いて、それが最初の出会いだったんです。それで毎年いろんな行事でその子に会うたびに、私たちが気になって見守り続けていて。で去年、卒業間近というときに、その子がお酒を飲んじゃって。見つかったというか、ばれちゃって。私たちはその子に「どうする?」って。

藤井 : うん。

出口 : そしたら、その子は「北星余市を辞める」って言うから、私たちは「絶対辞めるんじゃない」って言って。「あの謹慎のときに踏みとどまった気持ちは今どうなの?」って聞いて。でも、その子はバックれて地元、横浜かどこかだったかな、に帰っちゃったんですよ。それで、その子を説得するのに、千葉のお母さん方が団体で、仕事を休んで。

國井 : ははは。

出口 : 車に乗って説得しに行って。で、説得も1回で済まなくて。けっきょく何回か行って説得して。(可愛く)「おばさんたち、今日はもう仕事休み取れないの、早くチケット取りなさい」みたいなノリで、その子に言って。

藤井 : 余市に戻るためのチケットを。

出口 : そうそう。で、千葉のお母さんから「チケットを取って飛行機に乗せたからー」って連絡があったので、「分かったよー」って新千歳空港でわたしが出迎えて、その子を余市まで送っていったっていうエピソードがありまして。

國井 : はー。

藤井元々はたまたまの出会いなのに、そこまでやってしまうってことですよね。

出口 : そうですね。

藤井北海道を飛び越えて千葉にまで広がっているネットワークが、たまたま機能したという。

出口全国にそうやって親たちがいるから、きっと各地にいる悩んでいるお母さん方は明るくなれます。

國井 : うーん。

千葉 : (苦笑)

出口 : なによ?

千葉 : いや、明るいなって(笑)。

國井そう簡単に辞めさせてもらえないんですよ、この学校は。

藤井 : ねー。

國井 : 辞めるってなると、生徒や親を投入してくるんですよ。

藤井 : ははは。使える資源をフル活用する。

國井 : 辞めようとしてる奴がそこにいるから「新潟、行け」とか言って。同じ寮にいたやつから「新潟、行ってこい」ってぼくも言われたことがあって、新潟行ったりとか。地元に逃げても、先生が攻めてくる。

藤井 : わはははは。各地に拠点があるみたいな。

國井 : そうです。

出口先生が飛行機に乗って家庭訪問に来ますからね。

國井 : うん。

藤井 : そうか、陸続きじゃない場所なら飛行機になりますよね。場合によっては船だったりとか。

出口 : うん。それだけ生徒を気にかけてくれる先生たちが多いんだなって。

藤井 : うん。話を聞いてると、最近世の中ってセーフティネットが希薄になったみたいな話を聞きますけど、北星余市は勝手に強固なセーフティネットが出来ている。それこそ辞めようとしても辞められないくらいなまでになっているという。

國井 : そうそう。

藤井それは他にないんじゃないかっていうのが、まず北星余市の特徴であり、存続すべき意義のひとつじゃないかなっていう。それが何だろう、自然なものではない、まだちょっと説明できない力でそれが形成されているところがあるのかなって。

國井 : ぼくは不登校だったじゃないですか。

藤井 : ええ。

國井 : ぼくは不登校だったけど、弾かれたというかドロップアウトというか、いや弾かれたんじゃないですね、自分から外れたんですけど。本流に乗れなかったっていう。その乗れなくて傷付いた感を、北星余市はみんな持っている。やんちゃな人も本流に乗れなかった感を持っていて、その「感じ」でみんなが同じっていう、そういう仲間意識みたいなのが北星余市にはありましたよね。

千葉 : いや、あの学校は熱いんですよね

國井 : うん、熱い。

千葉 : すごい熱過ぎるから、たまに「うざいな」ってときもあるんですよ。

國井 : ははは。

千葉先生方がすごい干渉してくるし。

國井 : あー、干渉してきますね。

千葉 : うざいなって思うんだけど、それに飲まれちゃう。学校の雰囲気に飲まれる。

藤井 : うーん。

千葉そこが辞めさせられない、辞めようと思っても辞められない部分なのかなと思いますよね。

國井 : うんうんうん。

藤井 : そこで「うざい」と思いつつも・・・。

千葉 : もうガーッと来ますよ(笑)。

國井 : ははは。

藤井ホントに嫌にならないバランスが北星余市にはあるのかな。

千葉けっきょく勉強した記憶がまずないですね。

藤井國井出口 : わははは。

國井宿題があったかも覚えてない。

藤井 : わはは。

千葉 : 宿題はなかったですね。國井さんのときって教科書ありました?

國井いやー、ないですね。

藤井 : わははは。

國井 : とりあえず英語で覚えてるのは、ABCD~から始まった。

藤井 : わははー。

千葉 : そうみたいですね、1年生のときは。

國井 : そうそう、ABCDから始まりましたよ。

藤井 : 基本はまず抑えるんですね。

國井 : そうですよ。

千葉 : ひゃひゃひゃ。

國井 : 真面目な話をすると、小学校から行ってなかった子が来ちゃったりするんで。その辺りが全然わかんない子もいるわけですからね。

千葉そういう意味では、勉強できなくても卒業できますからね。ホントに、そこは思いますね。

出口 : 宗教の先生もテストを・・・。

千葉 : 宗教、覚えてない。

出口 : あ、覚えてない? 答案用紙に四角い枠があって、時間が余ったらここに自己表現かなんかを書いてごらんって。

千葉 : ははは。

出口 : それを息子が、バカだなーって思ったんだけど、「へのへのもへじ」って文字で顔を作るでしょ? あれで、「おれ、イケメーン」みたいな感じのを書いたら、それに先生が○をくれて。

藤井 : くれたんですか、点数を。

國井 : はー。

千葉 : あー、あったあった。なんか書けってあった。

出口 : 面白いなーって。

藤井 : そういうのは伝統的に続いてるものなんですかね。

千葉 : うーん。とにかくテスト自体と関係なく点数をくれるんですよ。小学校でいう「名前書けたら○くれる」みたいな感じですね。

出口 : そう。

藤井 : 単なる名前ではなく自己表現だから、生徒側に表現する余地というか自由は残してくれているんですよね。

國井先生としても、そんなに勉強を教える余力がないんですよ。

藤井 : わははは。

國井 : 生徒たちの起こすいろんなことに付き合っているんで(笑)。

藤井 : ははは、そういう中であっても、子どもたちのためにせめて点数をひねり出す余地を与えようとした苦肉の策ってことですね。

國井 : 苦肉の策だと思いますよ。先日の水曜日、実はぼく北星余市に行ってきたんですよ。現役の生徒会の子たちと話してきて。面白かったのが、追試とか補習になると先生も休めないから・・・。

藤井 : ははは。

國井 : これ言っていいのかな。

藤井 : いや、いいと思いますよ。ここまで来たら。

國井「お前らが残ると、俺らも休めねーだろ」って言われたそうで。「そりゃそうだ、休んでくれ先生」って思うくらいだったそうです。

藤井いやでも、そこは大事っていうか。先生も含めて、相手の立場を想像して自分たちの都合をお互いにどうすり合わせるかっていうのが、実は世の中の本質だったりするから。これは別に皮肉でも何でもないんですけど、これから世の中に出ていくにあたって大事なことをそこで学んでいる気がする。

國井 : そうなんですよ。

出口先生たち、職員会議がすごい長いんですよね。

國井 : 長い。

出口 : 夜中まで、やってるときありますよね。それこそ謹慎者とか出たときは。

藤井 : うーん。

出口 : そして謹慎の結果を聞くのが朝方だから。

藤井 : はいはい。

出口そこまで先生たちは子どもたちのために親身になってくれる。

藤井 : うん。

國井 : うんうんうん。

テキスト5 へ続く
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