カテゴリー別アーカイブ: 生きづラジオ

「とまこまい生きづラジオ」に関する投稿です。

生きづラジオ#008 配信します

2016年6月16日(木)19:30~20:30、久々『生きづラジオ』8回目を配信します。
ゲストは初の女性となる「めるし」さん。
洞窟で暮らすことを模索する洞窟女子、人見知りが集う場「人見知りバー」の考案者などといったユニークなことをいろいろ考えたり取り組んだりしてる方。
事前に軽く打ち合わせをしていますが、今回の生きづラジオは『死と再生』『安心の基地』がキーワードになりそうです。
季刊レポにてめるしさんが連載した『土偶をつくる』が面白いので、ぜひ読んでみてください。
http://www.repo-zine.com/archives/tag/%e3%82%81%e3%82%8b%e3%81%97

例によって録画配信もしますので、リアルタイムで視聴できない方も後からご覧になれます。
今回から、これまでの90分から60分に変えてみます。
コンパクトにした分、薄味になるか密度が濃くなるか、やってみてのお楽しみ。

生きづラジオを含めた過去の動画配信はこちら(↓)から。
https://www.youtube.com/channel/UCfviY7m4rgrwI3RMo3SewkA/featured

北星余市応援ラジオ・テキスト5 フリートーク編2 『人間は逸脱するということを前提にした場所』

テキスト4 からの続き
https://www.kokanet.org/archives/1666

hr008

藤井 : 今回、ぼくがホスト役でこのラジオをやってますけど。ぼくなりに北星余市の特徴で、それを残すべきものって何だろう?っていうのを考えたときに・・・。それこそ先日、テレビの報道特集で北星余市が取り上げられたときに「少子化」とか「貧困」っていうキーワードも出ていて、閉校の可能性にあたってそういった要因もあると思うんですけど、でもそういったものだけでは収まらない、それらを含むもっと大きな何かがあるような気がしていて。

國井 : うんうんうん。

藤井 : ぼくも割と「社会に馴染めない」系で、それは今も引きずっていて。人って何かから「逸脱するもの」っていうか。例えば教育って「(社会から)逸脱しないようにするため」のもので、それはそれで間違ってないんですけど、でもそれでもなお人って何かから必ず逸脱すると思うんですよね。周りのみんなが出来るけど自分だけはやれないことがどんな人でも一つや二つは必ずある。そうしたときに、逸脱しないように教育するという一方で、何かから逸脱するのを前提にした教育みたいなものも本来あった方が現実的じゃないか。

國井 : うーん。

藤井そう考えたときに、北星余市ってそこを担っていることに気付く。だって北星余市に行ってもなお、そこから逸脱して謹慎になったり、そこからも辞めようとする人がいるのが当たり前。それを北星余市が前提にしているからこそ、「謹慎の舘」というのを用意して、それでも嫌だとなったらさっき出口さんが話したようないろんなネットワークがそこを絡み取る。こういう「逸脱ありき」の発想っていうのは、ぼくは個人的にすごいホッとするし。

國井 : うんうんうん。

藤井 : ぼくも逸脱しちゃう方なので。それで北星余市では年齢もバラバラ、経歴もバラバラな人が集まっているから、まとめようがないメンバーが集まるわけじゃないですか。

國井 : うんうん。ごちゃまぜ。

藤井だから、そもそも最初からみんな逸脱している。それでもなお、そこから不思議なまとまりが自然に生まれている。ここを代替するものがいま世の中に存在しないのに、北星余市を無くしてしまっていいのかという。

國井 : うん。

出口 : ホントに犯罪に関わるようなことはダメだけど、「人と違うことはその子の特徴だ」って、個性だっていうふうに見てくれるところは、あまり他にないよね。

千葉 : うん。

出口先生が個性的だからね。

千葉 : うんうん。

出口 : 本間ちゃんの髪の毛とかもね。アポロチョコみたいな。

千葉 : でもね、本間先生がいたのはね、おれの後なんだよね。たぶんね。

出口 : 本間先生っていう人のヘアスタイルが、すごいいろいろ変わるんですけど。

藤井 : そんな変わるんですか。

出口 : わたしがはじめて見たときびっくりしたのが、「アポロチョコみたいだ」って。茶色・ピンクみたいな。

千葉 : わははは。

出口 : 「アポロチョコみたい!」って。

國井 : ははは。

出口それも個性です。

千葉でも新入生がはじめて北星余市に入ってきて、それを見たら「全然平気」って思うよね。そういう先生がいたら。

國井 : うんうんうん。

千葉みんなビシッとした格好をしているわけじゃないから。ホントにいろんな先生がいるから。

國井 : うーん。

藤井 : ちょっと質問があるんですけど。入学して最初にクラスで自己紹介をするってことでしたけど、千葉さんも、國井さんもか、自分のことはその時点では表に出したくないってことでした。そこはホントに自由なんですか? 北星余市に入る前の経歴を話すも話さないも自由?

千葉 : そうですね。

藤井 : でも北星余市での生活を続けていく中で、隠そうとしていたものが必ず自然に出ちゃうものなんですか? あるいはそこも人それぞれなんですかね?

千葉ぼくが思うのは、過去は過去であって、北星余市からのスタートという考えでみんな接してくるんで、過去の経歴が不登校だとか悪いやつだったとか、そんなのはみんな最終的に気にしてないですよね。でもやっぱり「こいつ何で北星余市に来たのかな?」って思ったりはするけども、それ以上「何で?何で?」っていうのはないし。例えば今、同じ寮で生活している中で「そいつが何をしてきたか」なんて気にせずに、今のそいつだけを見ることも出来るし。それが逆に、地元にいるときのそいつよりも、北星余市にいる時の方がホントのそいつなんじゃないかなって見えてくることもありますよね。

國井 : うんうんうん。

千葉地元にいたときの自分を変えたくて北星余市に来ている人もいるので、そういうことからも北星余市にいるときがホントの自分なのかなっていう感じがするときもありますね。

藤井 : うんうん。

國井 : 今の話の繋がりで言うと、傷というか過去、過去の扱いがぼくは北星余市ではみんな上手いなっていうか心得ているなって思ったんですよ。というのはぼく、北星余市を卒業した後に大学に行ったんですけど、そこの大学は普通の子たち、ちゃんと勉強してきた子たちが来る学校で。ぼくは北星余市を現役で卒業したので、同じ年齢の子たちが入学してきたんですけど、ぼくは不登校していたじゃないですか。で、北星余市の3年間で自分のことをさらけ出して、自分の過去も話しつついくと、周りとすごく仲よくなれるし、すごいカッコいいって思われるし、ホントにいい仲間になれるっていう成功体験があったので、それを大学でも具体的にやっちゃったんですよ(笑)。

千葉 : ははは。

國井 : そしたら、大学で周りのみんなは、ぼくのことをどう扱ったらいいのか分からないんですよ。そういう傷とか過去とかいう暴露話というか、なんて言うんでしたっけこれ、ぶっちゃけ・・・でなくて。

出口 : カミングアウト。

國井 : そう、カミングアウト。それが通じなくて、ぼくはすごい説教されたりとかして。

千葉 : 「そういうこと言ったらダメだ」みたいな。

國井 : 「ダメだよ」もあったし、「学校行かないのはおかしいんじゃない?」、「なんで行かないの?」みたいなのもあったし。それ以前にシーンとなっちゃって。

千葉 : 場が(笑)。

國井 : 場がシーンとなっちゃって。「そういうこともあるよね・・・」みたいな感じになって。

藤井 : ははは。「そういうこともあるよね」ってのは割とダメージ受けますよね。

國井 : そうか、これはダメなんだと思ったんですけど。でも北星余市のときって、例えば不良の友だちは無言で何も言わないんだけど、自分のことを受け入れてもらえる感っていうのがあって。酒を飲みながら、まぁこれはよくないんですけど。とにかく、そういう空気があって。だから全然違った。長くなってきたので、短めにしますけど。

藤井 : いやいや大丈夫ですよ(笑)。

國井 : 社会人になって思うのは、勉強なんて全然使わないじゃないですか。算数・数学なんていうのは。

藤井 : 試験対策としての勉強は、あまり使わないですよね。

國井 : それに対して、人間関係の感覚というか。自分を出すとか。その辺をめちゃめちゃ鍛えられたのが、北星余市だったなと思って。

藤井 : うん。そうですよね、いろんな経歴で年齢もバラバラの人が集まるのが社会なわけだから、北星余市の方が他の高校に比べて、むしろ社会の環境を先取りしている。実際は同じ年齢の人だけが集まる場の方が社会的には珍しいわけで。さっき千葉さんが「北星余市が時代の最先端」と言ってたのが言葉としてすごい印象的だったんですよ。

國井 : うんうんうん。

藤井「時代の最先端だから、そこで起こる問題も最先端である」っていう。だから、みんな対処の仕方が分からないのは当然。

國井 : ふふふふ。

藤井 : ぼくは、それが腑に落ちるんですよ。

國井 : なるほど、なるほど。

藤井だから「最先端のもの」が今なくなってしまうと、ぼくたちは何を頼りにこれから社会で起こるであろう問題に対処していけばいいのか?

國井 : うんうん。

藤井そういう話にもなるよなって気がして。北星余市存続の意義ですよね。なので、ぼくには響いたんですよ、「北星余市は時代の最先端」って言葉が。

國井「最先端でくる問題に泥臭さで勝負する」のが北星余市かな。

藤井 : ははは。それは生物的でいいですね。

國井 : 生物的なんですよ。それで先生も傷付くみたいな。傷付きながら行くみたいな。

藤井 : 返り血を浴びながら。

國井 : 返り血を浴びながら。

藤井 : こっちでも血を出しながら。

國井ボロボロになりながら、血反吐を吐きながら卒業式を迎えるっていうのが、北星余市の先生方ですよね。

千葉先生方は、すぐ泣きますからね。

國井 : あー。

千葉 : ホント、泣き虫なんですよね。

國井 : あー。

藤井 : 例外なく、たいていの先生は?

千葉 : たいていの先生は泣くんじゃないですか。泣かない先生は、あまり見ない。

國井 : ははは。

藤井 : いろいろ溜め込んでいるでしょうからね。

出口それだけ近いんだよね、生徒とね。

國井 : うん。

藤井 : 同じ目線にならざるを得ないってのがあるのかもしれないですよね。

出口実際、卒業しないで辞めちゃう子もいるんですよね。でも、辞めてもリピーターで来るんですよ。

國井 : そうですね。

出口来るんですよ。だから、けっきょくは居心地は良かったんだけど、それに気付けなくて辞めた。けれど次にリピーターとして来たときには、すごい活き活きして頑張るんですよね。

國井 : うーん。

藤井だから「1回、間を置ける」っていうのがいいんじゃないかな。

國井 : うんうんうん。

藤井 : あと、こないだ一度聞いたんですけど、北星余市は何歳まで入学できるんでしたっけ?

國井出口30歳。

藤井 : 30歳ですよね。

千葉 : 30歳まで。

藤井それも他にはない要素だなって。

國井千葉出口 : うんうん。

藤井 : 今、視聴者からコメントが入っていて。「この場(ラジオ収録現場)に北星余市の空気が流れていていい。後ろの障子が破れているのがいい、北星余市らしいと」

出口 : ははは。

千葉 : 國井さんが破いたんじゃないですか?

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藤井 : 北星余市の空気感が、この会場の環境を自然に呼び寄せたみたいな。

國井 : この障子の破れは謹慎ものですよね。

藤井 : 謹慎ものですか。

國井 : はははは。

藤井 : 今度、謹慎になる方がいたら、このラジオに出てもらって。

國井千葉出口 : ははは。

國井 : それ、いいですね。

藤井 : ここ(苫小牧市民活動センター和室)を謹慎部屋として使ってもらう。北星余市からちょっと距離を置いて自分を見つめ直すみたいな。他には「時代の最先端というのに共感」というコメントも入ってます。

國井 : うんうん。

藤井 : ホント、そんな気はしますね。

千葉 : ぼくが入学したときって「ギャル」とかいっぱいいましたからね。

國井 : あー。

千葉 : 周りがギャルばかりで、どこに目をやっていいのか、まったく分からないときがありましたから。

藤井ある種、その時代の流行が北星余市に集約されるってのは昔からあったんでしょうね。若者文化がひとまず集まる。

國井 : そうそう。

千葉 : で、先生方も携帯やスマホのいじり方を生徒に教えてもらったりしてるんだなと。

藤井 : あー。そこは双方向なんですね。生徒が先生に時代の先端を教えることもある。

千葉 : はい。

出口先生と生徒の距離が、まず近いから。

國井 : うーん。

出口あんな職員室は他にないですよ。

國井 : あー。そう。

藤井生徒が自由に入れるんですもんね。

出口テストの何日か前はさすがに入室禁止になるみたいなんですけど、それ以外は普通に入れる。なんかもうゴジャゴジャ。

千葉そうそう、職員室のドアを開けた瞬間、先生の名前を呼ぶからね。「マナブー!」っつって。

藤井國井 : わははは。

藤井とにかく基本、下の名前なんですね(笑)。

國井 : 下の名前ですね。

出口「先生」って、あまり呼ばないよね。

國井 : 呼ばないですね。

出口 : 校長先生(安河内敏さん)は「ヤッさん」だし。教頭先生(田中亨さん)は「トオルちゃん」だし。

國井 : うんうん。今ちょうど職員室が入室禁止になっているんですよ。こないだの水曜日に話をした生徒会の諸君も「ヒマ」って言ってて。職員室に入れないと生徒たちはヒマなんですよ。居場所がない。

藤井 : はいはい。

國井 : それくらいなところですよね。

藤井 : そろそろ終了の時間が来るんですけど。最後にちょっと軽く触れたいんですけど、下宿と寮というのも北星余市のキーワードのひとつかなという気がしていて。さっき國井さんから「全然毛色が違う人だったけど、同じ下宿で仲良くなれた」って話があったし、出口さんのように同じ下宿に子どもが住んでいたことで『母さんズ』という集まりを作ったりすることができていて、いろんな可能性に繋がっている。余市という地域を巻き込んでいるというか、絡めているというか、そういう要素も北星余市にはあるのかなという気がします。

國井 : うん。

藤井 : といったところで、急にぼくの方で不自然にまとめ始めてますけど(笑)。

國井千葉出口 : ははは。

國井 : いいんじゃないですか。

藤井 : で、今日最後にお伝えしたいのが、いま北星余市存続の署名を集めていまして。「北星余市の存続を考える会」?

國井出口 : 存続を願う会。

藤井 : 願う会。というところが、えーとFacebookですかね?

國井 : Facebook。

藤井 : そのFacebookのトップページ(https://www.facebook.com/hokuseiyoichi.sonzoku/)から署名用紙をダウンロードできるので、これを書いて、どこに送ればいいんでしたっけ?

出口 : 北星余市高校に。

藤井 : そちらに直接FAXで送ればいいそうです。こういう形でも応援ができますので、もし関心がある方は署名いただければと思います。

出口 : 職員室宛てでも大丈夫だと思います。

藤井 : 詳細は「願う会」のFacebookページを見れば分かると思います。それでは最後に皆さんから軽く挨拶をお願いできればと思います。感想でも何でもOKです。

國井 : そうですね。ぼくがうれしかったのはですね、昨日知り合いから連絡がありまして、「うち(知り合い)の息子を北星余市に入れる」って話があって。

出口 : へー。

國井 : あったんですよねー。

藤井 : これで入学数プラス1。

國井 : プラス1。で、校長先生の「ヤッさん」と話していて、いつまで入学者を募集してるんですか?って聞いたら、入学式の前日までと。4月のそこまでやり続けて、頑張って90人いくのが目標ですので。はい、今日はホントに面白かったです。ありがとうございます。

藤井 : ありがとうございます。

千葉 : えーと、家で閉じこもって「つまんないなー」って生活している人とかも、一歩ちょっと違う景色を見られるところで、そこでは見る方向も変わってくると思うんで。一度、北星余市高校のホームページなり、Facebookなりを見てもらって、こういう学校もあるんだって興味を持ってもらえればいいなと思っています。いろいろな情報は今の時代あると思うんで、そういうところからも北星余市の情報をいっぱい拾ってもらえれば。周りの人から声をかけてもらったりもして。さっき國井さんが言ってたように、何としてでも入学式前日までには90名いけたらな、いきたいなと思ってますので、お力添え、すみませんけどよろしくお願いします。

出口 : 今、不登校のお子さまとか、やんちゃとかで困っている親御さんがいっぱいいると思うんですけど、けっして孤独感に陥らないで、こういう情報を見ながら「北星余市」と検索してみてください。たぶん、わたしもそうでしたけど、一人じゃないんだって。うちと同じような家があるんだってことに気付かされて、肩の荷がおります。この学校は時代のさいしぇんたん・・・。

千葉 : ははは。

出口噛んだ(笑)。

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國井惜しい(笑)。すごい、いい空気だったのに

千葉0点だ(笑)。

國井 : ははは。

千葉追試だ、追試(笑)。

藤井自己表現が問われてきますよ(笑)。

國井 : そうですね(笑)。

出口「時代の最先端」で(笑)。ホントに真の教育をしているところだと思ってますので。 ぜひ学校の方に声をかけてあげてください。よろしくお願いします。

藤井 : はい。で、今日のこのラジオは苫小牧から配信してるんですけれども、國井さんは洞爺湖町の方にお住まい。

國井 : はい。

藤井もし胆振圏内で北星余市に関心をお持ちの方がいたら、ここにいる私たちで都合をつけて個別に説明などに行けますので、そのときは遠慮なく連絡いただければと思います。それでは「北星余市応援ラジオ」、終了したいと思います。ご視聴、どうもありがとうございました。

國井千葉出口 : ありがとうございました。

藤井 : お疲れさまです。

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終了

北星余市応援ラジオ・テキスト4 フリートーク編1 『そう簡単に辞めさせてもらえない学校』

テキスト3 からの続き
https://www.kokanet.org/archives/1664

hr005

藤井 : それで出口さんと言えば、お母さんのコミュニティをやられているんですけども。

出口 : そうですね。

藤井 : その辺の話しをぜひ。

出口 : あ、いいですか?

藤井 : はい、時間の余裕があるので。

出口 : そうなんですよ。(Tシャツを示しながら)ステキでしょ。わたしの息子がいちばん最初に入った下宿で、その同じ下宿の子どもたちのお母さんたちと今でもずっと仲が良くって。札幌に一人、千葉に三人、神戸に一人、苫小牧のわたしを入れて全部で六人。『母さんズ』っていう勝手なネーミングを付けて活動しているんです。やっぱり子どもが在学中、私たちは必死なんですよね。

藤井 : うん。

出口 : でも、その中でOBのお父さん・お母さんたちが、私たちの子どもをを気にかけてくれたりとかして、親の知らないところで子どもたちがお世話になっていることがあって。そうした中で、私たちは在学中も活動してましたけど、子どもたちが卒業した後も、自分たちがしてもらった分を他のお子さんに返そうという感じで。

藤井 : うんうん。

出口 : いろんな子どもたちに声をかけたりして。あと、北星余市は私立の高校ですから、寄付金とかってありますよね。在学中はなかなか寄付はできませんよ、親は。それで、卒業してから『母さんズ』で、特に千葉のお母さんたちがリーダーシップをとってやってるんですけど、(Tシャツを示しながら)こういう北星余市のネーミングを入れて、「H・Y・P」が北星余市PTAの略なんですよ。

藤井 : あー、なるほど。はいはい。

出口 : (背中をカメラに向けて)で、後ろのこれ。(熊のマークのプリントを見せながら)「親出没注意」。

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國井 : ははは、すごいですねー、はいはいはい。

出口 : 「子どもがどこにいても親が見守っているよ」っていう思いを込めて、このロゴでTシャツだとかステッカーだとか、エコパックだとかエプロンだとか、そういうものを発注して作って、学校祭とか競歩のときに、これらを欲しいっていう現役のPTAのお母さんたちに買っていただいて、その収益を学校の方に寄付する活動をしています。

藤井 : はいはい。うーん。これは他の下宿のお母さんたちも同じようなことをやられているんですか?

出口 : 他の下宿のお母さんたちはどうなんでしょうね。今のところは、自分たちが勝手にやってる感じです。

藤井 : ははぁ。でも、そうやって各自勝手にやってる、やっていいというのも北星余市の特徴のひとつかなーって思いますね。

出口 : 下宿単位とかではなくて、学校祭とかになったら手作りの編み物とか、そういうものを親がバザーで売ったりした収益金を寄付することはありますね。

藤井 : はいはい。話を聞いてると、そういういろんな物をブランド化して打ち出しやすい要素が北星余市にはあるのかなって思いますね

出口 : たしか50周年のときは、そういった商品の売上金がけっこうあったので、50周年事業の寄付にできましたし、(スマホ裏を見せながら)こんな感じで「親出没注意」のステッカーを作ることもできて。

國井 : ははは。

藤井 : こないだ見せてもらいましたけど、いいですよね。

出口 : あとは去年、全然他人のお子さんなんですけど。わたしたち『母さんズ』で卒業文集に文章を寄せることになって。子どもたちは謹慎したら「謹慎の舘」に行くじゃないですか。そこで何をしてるんだろう、どんなことをしてるんだろう、「牛くさい」ってどういうことなんだろうと思って。

藤井 : 謹慎中に行くことになる場所ですよね。

出口 : そう。牛くさいのは臭いのかもしれないけど、実際にどんなことをするのか私たちが体験してきちゃおうかっていう軽いノリで。赤井川の方に「あったべや」さんという民宿があって、そちらの牛のお世話をするところなんですけど、体験に行ったんですよね。

藤井 : うん。

出口 : で、実際そこに一人謹慎をしていた子が偶然いて、それが最初の出会いだったんです。それで毎年いろんな行事でその子に会うたびに、私たちが気になって見守り続けていて。で去年、卒業間近というときに、その子がお酒を飲んじゃって。見つかったというか、ばれちゃって。私たちはその子に「どうする?」って。

藤井 : うん。

出口 : そしたら、その子は「北星余市を辞める」って言うから、私たちは「絶対辞めるんじゃない」って言って。「あの謹慎のときに踏みとどまった気持ちは今どうなの?」って聞いて。でも、その子はバックれて地元、横浜かどこかだったかな、に帰っちゃったんですよ。それで、その子を説得するのに、千葉のお母さん方が団体で、仕事を休んで。

國井 : ははは。

出口 : 車に乗って説得しに行って。で、説得も1回で済まなくて。けっきょく何回か行って説得して。(可愛く)「おばさんたち、今日はもう仕事休み取れないの、早くチケット取りなさい」みたいなノリで、その子に言って。

藤井 : 余市に戻るためのチケットを。

出口 : そうそう。で、千葉のお母さんから「チケットを取って飛行機に乗せたからー」って連絡があったので、「分かったよー」って新千歳空港でわたしが出迎えて、その子を余市まで送っていったっていうエピソードがありまして。

國井 : はー。

藤井元々はたまたまの出会いなのに、そこまでやってしまうってことですよね。

出口 : そうですね。

藤井北海道を飛び越えて千葉にまで広がっているネットワークが、たまたま機能したという。

出口全国にそうやって親たちがいるから、きっと各地にいる悩んでいるお母さん方は明るくなれます。

國井 : うーん。

千葉 : (苦笑)

出口 : なによ?

千葉 : いや、明るいなって(笑)。

國井そう簡単に辞めさせてもらえないんですよ、この学校は。

藤井 : ねー。

國井 : 辞めるってなると、生徒や親を投入してくるんですよ。

藤井 : ははは。使える資源をフル活用する。

國井 : 辞めようとしてる奴がそこにいるから「新潟、行け」とか言って。同じ寮にいたやつから「新潟、行ってこい」ってぼくも言われたことがあって、新潟行ったりとか。地元に逃げても、先生が攻めてくる。

藤井 : わはははは。各地に拠点があるみたいな。

國井 : そうです。

出口先生が飛行機に乗って家庭訪問に来ますからね。

國井 : うん。

藤井 : そうか、陸続きじゃない場所なら飛行機になりますよね。場合によっては船だったりとか。

出口 : うん。それだけ生徒を気にかけてくれる先生たちが多いんだなって。

藤井 : うん。話を聞いてると、最近世の中ってセーフティネットが希薄になったみたいな話を聞きますけど、北星余市は勝手に強固なセーフティネットが出来ている。それこそ辞めようとしても辞められないくらいなまでになっているという。

國井 : そうそう。

藤井それは他にないんじゃないかっていうのが、まず北星余市の特徴であり、存続すべき意義のひとつじゃないかなっていう。それが何だろう、自然なものではない、まだちょっと説明できない力でそれが形成されているところがあるのかなって。

國井 : ぼくは不登校だったじゃないですか。

藤井 : ええ。

國井 : ぼくは不登校だったけど、弾かれたというかドロップアウトというか、いや弾かれたんじゃないですね、自分から外れたんですけど。本流に乗れなかったっていう。その乗れなくて傷付いた感を、北星余市はみんな持っている。やんちゃな人も本流に乗れなかった感を持っていて、その「感じ」でみんなが同じっていう、そういう仲間意識みたいなのが北星余市にはありましたよね。

千葉 : いや、あの学校は熱いんですよね

國井 : うん、熱い。

千葉 : すごい熱過ぎるから、たまに「うざいな」ってときもあるんですよ。

國井 : ははは。

千葉先生方がすごい干渉してくるし。

國井 : あー、干渉してきますね。

千葉 : うざいなって思うんだけど、それに飲まれちゃう。学校の雰囲気に飲まれる。

藤井 : うーん。

千葉そこが辞めさせられない、辞めようと思っても辞められない部分なのかなと思いますよね。

國井 : うんうんうん。

藤井 : そこで「うざい」と思いつつも・・・。

千葉 : もうガーッと来ますよ(笑)。

國井 : ははは。

藤井ホントに嫌にならないバランスが北星余市にはあるのかな。

千葉けっきょく勉強した記憶がまずないですね。

藤井國井出口 : わははは。

國井宿題があったかも覚えてない。

藤井 : わはは。

千葉 : 宿題はなかったですね。國井さんのときって教科書ありました?

國井いやー、ないですね。

藤井 : わははは。

國井 : とりあえず英語で覚えてるのは、ABCD~から始まった。

藤井 : わははー。

千葉 : そうみたいですね、1年生のときは。

國井 : そうそう、ABCDから始まりましたよ。

藤井 : 基本はまず抑えるんですね。

國井 : そうですよ。

千葉 : ひゃひゃひゃ。

國井 : 真面目な話をすると、小学校から行ってなかった子が来ちゃったりするんで。その辺りが全然わかんない子もいるわけですからね。

千葉そういう意味では、勉強できなくても卒業できますからね。ホントに、そこは思いますね。

出口 : 宗教の先生もテストを・・・。

千葉 : 宗教、覚えてない。

出口 : あ、覚えてない? 答案用紙に四角い枠があって、時間が余ったらここに自己表現かなんかを書いてごらんって。

千葉 : ははは。

出口 : それを息子が、バカだなーって思ったんだけど、「へのへのもへじ」って文字で顔を作るでしょ? あれで、「おれ、イケメーン」みたいな感じのを書いたら、それに先生が○をくれて。

藤井 : くれたんですか、点数を。

國井 : はー。

千葉 : あー、あったあった。なんか書けってあった。

出口 : 面白いなーって。

藤井 : そういうのは伝統的に続いてるものなんですかね。

千葉 : うーん。とにかくテスト自体と関係なく点数をくれるんですよ。小学校でいう「名前書けたら○くれる」みたいな感じですね。

出口 : そう。

藤井 : 単なる名前ではなく自己表現だから、生徒側に表現する余地というか自由は残してくれているんですよね。

國井先生としても、そんなに勉強を教える余力がないんですよ。

藤井 : わははは。

國井 : 生徒たちの起こすいろんなことに付き合っているんで(笑)。

藤井 : ははは、そういう中であっても、子どもたちのためにせめて点数をひねり出す余地を与えようとした苦肉の策ってことですね。

國井 : 苦肉の策だと思いますよ。先日の水曜日、実はぼく北星余市に行ってきたんですよ。現役の生徒会の子たちと話してきて。面白かったのが、追試とか補習になると先生も休めないから・・・。

藤井 : ははは。

國井 : これ言っていいのかな。

藤井 : いや、いいと思いますよ。ここまで来たら。

國井「お前らが残ると、俺らも休めねーだろ」って言われたそうで。「そりゃそうだ、休んでくれ先生」って思うくらいだったそうです。

藤井いやでも、そこは大事っていうか。先生も含めて、相手の立場を想像して自分たちの都合をお互いにどうすり合わせるかっていうのが、実は世の中の本質だったりするから。これは別に皮肉でも何でもないんですけど、これから世の中に出ていくにあたって大事なことをそこで学んでいる気がする。

國井 : そうなんですよ。

出口先生たち、職員会議がすごい長いんですよね。

國井 : 長い。

出口 : 夜中まで、やってるときありますよね。それこそ謹慎者とか出たときは。

藤井 : うーん。

出口 : そして謹慎の結果を聞くのが朝方だから。

藤井 : はいはい。

出口そこまで先生たちは子どもたちのために親身になってくれる。

藤井 : うん。

國井 : うんうんうん。

テキスト5 へ続く
https://www.kokanet.org/archives/1668

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